この本この行: 読書メモと引用メモ


書評未満。読書感想文未満。
読んだ本のエッセンスと引用を、コンパクトに書き留めています。読書のきっかけになれば幸いです。
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カテゴリ: 文芸


この本、この行

若い皆さん、老眼というのはある日突然やって来るのです。(p.12)

読書メモ

2015年8月刊。15年目に突入した、朝日新聞の連載エッセイ。
本巻の掲載期間は、2013年8月から、2014年10月まで。

前巻では、愛犬が亡くなったり、新しい奥さんが来たりいろいろあったけど、今回はプライベートは穏やかな期間だったみたい。

100分間のワンシーンワンカット(長回し)の『大空港2013』、観たい。

かみさんは、この本を読んで、老眼鏡 リーディンググラスを買いに行く決心をした。


引用メモ

本来自分は一脚本家である。既に決まった企画を受けて、プロデューサーの意向に従ってホンを書く。それが僕の仕事のやり方だったはず。(p.33)
「フラ」というのは、舞台用語と言っていいのだろうか、落語家や喜劇俳優がよく使う言葉。ステージに出た瞬間、お客さんがなんだか笑ってしまう、そんな「雰囲気」のこと。それは技術でどうにかなるものではなく、持って生まれたものだ。(p.72)
僕は、自分で演出をするようになってから、取材で「役者の新しい一面を引き出すのがうまいですね」と言われることがある。とんでもない話だ。新しい一面なんか、どうすれば発見出来るのか、僕にはさっぱり分からない。(p.115)
我ながら、唖然となる。僕はこの14年間、一体何をしてきたのだ。脂が乗ったはずの40代を、自分は無駄に過ごしてきたのではないか。依然として、プロフィルに載る代表作は、舞台は「笑の大学」、ドラマは「王様のレストラン」、映画は「ラヂオの時間」。すべて、この連載が始まる前に作ったもの。なんということだ。
これだから、過去を振り返るのは嫌なのだ。たまに振り返ると、こんな感じになる。(p.130)
18年前とは違い、今の僕は分かっている。長年の経験で得た知恵がある。ここまで大きな壁ではなかったけど、これまでだって、何度も壁にはぶつかってきた。だが、壁というものは、ゴールの近くにあるものなのである。だから、壁にブチ当たった時は、「ようやくここまで来たぞ」と、むしろ喜ぶべきなのだ。(p.182)
三谷幸喜のありふれた生活13 仕事の虫

三谷幸喜 朝日新聞出版 2015-08-20
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B勘あり!

B勘あり!

  • 作者:飯田 真弓
  • 出版社:日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2015-06-04

この本、この行

ある特定の費用を計上しないということは、それに紐つく売り上げを除外する意図があると、そう判断されても仕方ないんですよ」。(中略)
「『両建て』って言うんですよ」(中略)
「入るほうも出るほうも、すなわち売り上げも、費用も、両方とも表に出さない。これは意図的にやったとしか説明のしようがないんですよ」(p.80)

読書メモ

2015年6月刊。
税務署員と税理士の両方の視点から書かれた小説。

著者は『税務署は見ている。』を書いた、元国税調査官。
タイトルの「B勘」とは「借名預金」(いわゆる隠し口座)のことを指す。

3つの事案が絡み合うところが、面白くもあり、ややこしくもある。
正直、小説的な面白さとしてはイマイチだけど、税務署の裏側が覗けるという点では稀有な小説かもしれない。

章の間に挟み込まれている「用語解説」がなかなか面白い。


引用メモ

「あるべきものがあって、正解。あってはならないものがそこにあったら間違いです。ないはずのものがあってもダメです。わかりますね。この質問と検査を総称して税務調査と呼んでいるんです。」(p.185)
【白色申告】
確定申告書には青色と白色がある。昔は本当に紙の色が白と青(水色)だった。白色申告にも記帳義務があると謳われてから、白色と青色の違いは何なのか、わかりにくくなった。調査官目線から言うと、白色はきちんと申告しようとする意思がない人、あるいは、申告納税制度にもの申したいと思っている人、さらには、まったく税務に興味も関心もない人となり、よい印象は持たれない。(p.213)
【控除失格】
収入から経費を引いて、そこからさらに扶養控除や基礎控除を差し引きすると、税金を払う計算のもとになる所得金額がマイナスになる場合がある。それを控除失格と呼ぶ。支払う税金がない場合は確定申告を提出しなくてもいいのだが、様々な行政機関は確定申告書の控えの提出を求めることがあり、税額がゼロでも、確定申告書を提出する人はいる。(p.214)
【家事消費】
飲食店や食料品店の場合、残りものを家族で食べたりすることがある。「自分の店のもんを食べて何が悪いんじゃ」と言いたくなるだろうが、仕入金額は税金の計算に入っている。家族がそれを食べれば1食が助かる。「助かった=儲かった」となり、儲かったと思う金額は「家事消費」として売上金額に加算しなければならないのだ。(p.259)

(太字は引用者による)

B勘あり!

飯田 真弓 日本経済新聞出版社 2015-06-04
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関連する本

同じ著者による本。
こちらは小説ではなく、税務署の仕事内容について書かれている。

税務署は見ている。 (日経プレミアシリーズ)

飯田 真弓 日本経済新聞出版社 2013-09-10
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読書メモ

2015年7月刊。
期間限定サイト「村上さんのところ」(2015年1月〜5月)でやりとりされた、読者からの質問・相談メールと、村上春樹からの返信メール 3716 通の中から 473 通が選りすぐって掲載されている本。
(すべての返信メールは、電子書籍の「コンプリート版」で読めるとのこと)

彼の作品を1冊も読んだことがない自分が読むのも何なのだけれど、人気本のようだし、図書館で借りられたので読んでみた。

意外と面白い。ノージャンルならではの面白さ。
分量が多くて読むのが大変だけれど、途中でやめるのがもったいない魅力がある。
村上春樹の回答が親切。
スワローズファンで、猫好き。

彼のファンのことは「ハルキスト」ではなく「村上主義者」と呼ぶのが公認の呼び方なのですね。


引用メモ

Q: 村上さんは、自分のことを純文学者だと思われますか?

A: 僕が「これは純文学だ」と意識して小説を書いているかというと、とくにそんなことはありません。でも心の底で「これは娯楽小説ではない」という意識はいくらかあります。娯楽小説ではないというのは、言い換えれば、作者が読者に対してある種の、ある程度の努力を要求することだろうと僕は考えています。言うなれば、咀嚼力を要求するということです。「ここから先は自分の歯で嚙んでくださいね」ということです。(p.40, No.081)
Q: 村上さんが相手にメッセージを伝える時に意識している事は何ですか?

A: 親切心です。それ以外にありません。親切心をフルに使ってください。それが文章を書く極意です。おもねるのではなく、親切になるのです。(p.52, No.105)
Q: 彼女は村上さんの本が好きではありません。どちらかというと嫌いです。さらに困ったことに、彼女の母が(中略)こういったことは今後の人生で問題になるのでしょうか?

A: 奥さんと奥さんのお母さんというのは、すごく大事です。よく話を合わせておいた方がいいと思います。「村上春樹なんて、ほんと、かすみたいなやつだよね」とか「あんなやつの本なんて、まったく紙の無駄遣いですよ。社会の恥だ」とか好き放題言ってかまいません。そして陰でこそこそ僕の本を読み続けてください。それこそが「村上主義者」の真骨頂です。(p.64, No.132)
Q: 村上さんは、自分のファンがどのように名付けされて、ファイリングされるかという事に、どのようにお考えですか?

A: このサイトでは「村上主義 (Murakamism)」あるいは「村上主義者 (Murakamist)」という呼び名でいちおう統一しております。誰がこしらえたのかは知りませんが、「ハルキスト」というのは語感がいささかチャラいので、とりあえず無視しませんか。(p.110, No.225)
Q: 私はこの「大変だったでしょう」という言葉になんて返せばいいのでしょう?

A: まわりの人たちはあなたをなんとか慰めたいと思うんだけど、うまい言葉を見つけられないだけなんです。みんながうまい言葉を見つけられるわけじゃないんです。そのことを理解してあげてください。言葉というのは本当にむずかしいものです。僕がそんなときになんと答えるか? 「ええ、ずいぶん大変でした。ありがとうございます」と答える以外にないんじゃないですか? (p.114, No.232)

(太字は引用者による)


関連サイト


村上さんのところ

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大泉エッセイ 僕が綴った16年 (角川文庫)

大泉エッセイ 僕が綴った16年 (角川文庫)

  • 作者:大泉 洋
  • 出版社:KADOKAWA/メディアファクトリー
  • 発売日: 2015-04-25

読書メモ

2013年刊。2015年4月文庫化。
1997年(24歳)〜2005年の連載エッセイと、2013年, 2015年(40歳)の描き下ろしエッセイ。
後半の描き下ろしが面白かった。『水曜どうでしょう』の自己分析も。

引用メモ

私はあの番組(『水曜どうでしょう』)には唯一他の番組がやったことのない、独自の新しい手法があると思っている。それは「カメラが演者を撮らない」という手法だ。これは日本のバラエティー史上に残る発明的手法だと思う。(p.328)
一つの作品を作れば、大量の宣伝をしなくてはならない。テレビ、雑誌、ラジオ、ネット媒体、様々なものに露出して宣伝しないと、今の時代、ドラマにしても映画にしても、多くの人に観てもらうことはできないのだ。(中略) その結果、私の「ローカルタレント感」はかなり薄れてしまったかもしれない。(p.352)
実際、私の北海道のレギュラー番組は十年前からほとんど変わっていない。北海道での活動に大きな変化はないのだ。変わったのは、役者の仕事が増えたということなのだ。さらに訳者の仕事はバラエティーに比べると、圧倒的に時間がかかるのである。そりゃそうだ。映画なんかになれば、1日で4、5分の映像しか撮れない、なんてことはざらにある。 だから、東京にいる時間が必然的に増えてしまうのだ。(p.352)

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読書メモ

2015年3月刊。
前作の『朝霧』から実に17年ぶりの《円紫さんと私》シリーズ。
今回は「日常の謎」ではなく、古典文学の「原典」を探す旅。

前作で完結したと思っていたので、うれしい。
内容は難しいけど、美しい日本語にうっとり。


引用メモ

原稿という楽譜が、形をとったものが本だ。本を作るというのは演奏することだ。曲を愛するなら優れた演奏を聴きたいと思うのは自然ではないか。(p.11)
思いついたことがあると口にしたくなる性分だから、仕方がない。謎と書いたカードがあったら、つい表に返したくなってしまう。(p.75)
広くいえば、活字の大きさから紙の質、手触りまで、そこに含まれるだろう。演奏によって音楽は、その色合いを変える。 それこそが、本を手に取るということだろう。(p.202)

太宰治の辞書

北村 薫
新潮社 2015-03-31
by ヨメレバ

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